【社労士の視点】ついに判明した「不支給倍増」の実態。開始された救済措置(再判定)と今後の対策

厚生労働省の調査報告書と障害年金再審査開始

以前より当コラムでも警鐘を鳴らしておりました「障害年金の審査傾向の変化」について、2025年6月11日、厚生労働省より決定的な調査報告書が公表されました。

公表されたデータは、私たちが現場で感じていた「不当な厳しさ」を裏付けるものでした。不支給決定の割合が急増していた事実が公式に認められ、異例とも言える「過去の不支給事案の点検(事実上の再審査)」が既に開始されています。

今回のコラムでは、公表された報告書の内容を詳細に紐解き、「具体的にどのようなケースが救済(支給決定)されているのか」という点検の深層と、これから請求される方が注意すべき点について、社会保険労務士の視点で解説します。

なぜ不支給率は倍増したのか?判明した「審査の歪み」

報告書によると、令和6年度の新規裁定における不支給(非該当)の割合は、前年度の8.4%から13.0%へと急上昇していました。特に精神障害においては、6.4%から12.1%へと約2倍に跳ね上がっています

【不支給となっていた主な要因】
調査の結果、精神障害の不支給事案のうち約75%が、「ガイドラインの目安よりも下位の等級に認定された」ケースであることが判明しました。
これは、診断書の数値上は「2級相当」であるにもかかわらず、審査の過程で「3級」や「不支給」と判定される運用が多発していたことを意味します。

また、今回の調査では、認定医に対する不適切なメモ(傾向と対策など)が含まれた内部文書の存在も確認されました。組織的な指示までは認められなかったものの、現場レベルでの「予断を持った審査」が行われていた可能性は否定できません。

【重要】どのようなケースが「救済」されているのか

日本年金機構では現在、令和6年度以降の不支給事案等について再度の点検(見直し)を実施しています。単なる計算間違いのチェックではなく、「評価基準そのものの見直し」が行われている点が極めて重要です。

点検の進捗(令和7年9月19日公表時点)

対象
令和6年度以降の精神障害等の不支給事案(約11,000件)など。

結果
令和6年7月原処分までの点検において、既に124件(約4.3%)が「支給決定」へと覆っています

厚生労働省の資料によると、今回の点検では、これまでの厳しい審査で軽視されがちだった以下のポイントを再評価し、支給決定につなげています。

▼ 今回の点検で「重視」されるようになったポイント

就労状況の評価
以前は「働けている=不支給」となりがちでしたが、点検では「単純作業の繰り返しではないか」「職場で特別な配慮を受けていないか」「仕事による疲労で日常生活に支障が出ていないか」といった実態を重視しています。

一人暮らし(独居)の評価
以前は「一人暮らしができている=自立」と判断されやすかったものが、その背景にある「家族や福祉サービスの援助の有無」「対人恐怖による引きこもり状態ではないか」といった背景事情まで踏み込んで評価されています。

病状・療養状況の評価
現在の状態だけでなく、「長期にわたる療養歴」や「予後の見通し(改善の難しさ)」を考慮要素として重視するよう修正されています。

今後の審査体制と、請求をお考えの方へ

今後、同様の不当な審査を防ぐため、以下のような抜本的な改善策が導入されます。

職員による等級案の廃止
これまで事務職員が事前に「等級案」を作成し、それが認定医の判断を誘導していた懸念がありましたが、この運用は廃止されます。

担当認定医の無作為決定
特定の医師に案件が偏らないよう、担当医はランダムに決定されます。

複数認定医による審査
全ての不支給事案について、一人の医師ではなく複数の医師によるダブルチェックが行われます。

専門家からのアドバイス

今回の報告書により、これまでの不透明な審査の実態が公になり、是正へと動き出したことは大きな前進です。
特に「働いているから」「一人暮らしだから」という理由だけで不当に落とされていた方にとっては、大きな希望となります。

しかし、制度が適正化されたとしても、「ご自身の障害の状態を、書類で正確に伝える」という請求側の責任が変わるわけではありません。むしろ、今後は「配慮を受けている実態」や「生活の背景」を、いかに具体的に病歴・就労状況等申立書等に落とし込めるかが合否の分かれ目になります。

「点検対象になるか不安」「これから請求したいが、どう書けば正当に評価されるか分からない」という方は、ぜひ専門家である社労士にご相談ください。

<出典・参考資料>
第80回社会保障審議会年金事業管理部会 資料(令和7年9月19日)
「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」
「不支給等事案にかかる点検作業の進捗状況について」
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/tenken.html

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