肝臓の障害認定基準
障害年金には1級・2級・3級の3つの等級があります。加入していた年金制度によって受け取れる等級が異なります。国民年金は1級・2級まで、厚生年金は1級から3級まで(および障害手当金)が対象となります。
肝疾患による障害の認定対象は、慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態(食道・胃静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がん等)です。
1. 肝疾患の障害認定基準(全体像)
肝疾患の等級判定は、「臨床所見(検査数値などの異常)」の数と、「一般状態区分表(日常生活の制限度)」を組み合わせて行われます。
等級の目安
| 等級 | 障害の状態(組み合わせ) |
| 1級 |
以下のいずれかに該当し、かつ、一般状態区分表の「オ」に該当するもの
|
| 2級 | 検査成績等の中等度以上の異常が3つ以上あり、かつ、一般状態区分表の「エ」または「ウ」に該当するもの |
| 3級 | 検査成績等の中等度以上の異常が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表の「ウ」または「イ」に該当するもの |
2. 判定に使われる指標(検査成績・一般状態)
等級判定のカギとなる「検査成績の異常」と「一般状態」の定義は以下の通りです。
【重要】臨床所見(検査項目の異常値)
診断書において、以下の項目のうちいくつが「異常」に該当するかがカウントされます。
| 検査項目 | 中等度の異常 | 高度の異常 |
| 血清総ビリルビン (mg/dL) |
2.0 以上 ~ 3.0 以下 | 3.0 超 |
| 血清アルブミン (g/dL) |
3.0 以上 ~ 3.5 以下 | 3.0 未満 |
| 血小板数 (万/μL) |
5 以上 ~ 10 未満 | 5 未満 |
| プロトロンビン時間 (PT活性値 %) |
40 以上 ~ 70 以下 | 40 未満 |
| 腹水 | 腹水あり | 難治性腹水あり (利尿剤抵抗性) |
| 肝性脳症 (昏睡度分類) |
昏睡度 Ⅰ | 昏睡度 Ⅱ 以上 |
【重要】一般状態区分表(日常生活の制限度)
| 区分 | 一般状態の状態 |
| ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
| イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業(軽い家事や事務等)はできるもの |
| ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
| エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
| オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
3. 肝性脳症(昏睡度)の分類
肝機能低下に伴う「肝性脳症」がある場合、その程度(昏睡度)によって中等度・高度の判定が分かれます。
| 分類 | 症状の目安 |
| Ⅰ度 | 睡眠・覚醒リズムの逆転、だらしなく気にとめない態度、多幸気分、ときに抑うつ状態など。 |
| Ⅱ度 |
見当識(時・場所)障害、異常行動、ときに傾眠状態(呼びかけで開眼し会話可能)。 ※羽ばたき振戦あり。 |
| Ⅲ度 |
嗜眠状態(刺激で開眼しうるが、指示には従えない)、興奮状態、せん妄状態。 ※羽ばたき振戦あり。 |
| Ⅳ度 | 昏睡(完全な意識消失)。痛み刺激には反応する(払いのける動作など)。 |
| Ⅴ度 | 深昏睡。痛み刺激にも全く反応しない。 |
4. 各病態ごとの注意点
⚠️ アルコール性肝硬変の場合
アルコール性肝硬変での認定には、以下の条件が必須となります。
- 継続して必要な治療を行っていること。
- 検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことが確認できること。
※断酒していない場合は、原則として認定されません。
慢性肝炎
慢性肝炎は、原則として認定の対象となりません。ただし、肝硬変へと移行し、認定基準(上記の検査数値異常等)に該当する状態になっている場合は認定の対象となります。
食道・胃静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎
これらの合併症がある場合は、吐血・下血の既往、治療歴の有無及びその頻度、治療効果に加え、検査項目や臨床所見の異常を総合して認定されます。
肝がん
肝がんについては、肝疾患としての検査数値異常(肝機能障害)に加え、がんによる全身衰弱や組織の障害を考慮し、「悪性新生物(がん)による障害」の基準も併せて認定されます。
5. 肝臓移植の取り扱い
肝臓移植を受けた場合、認定基準は以下のようになります。
💡 肝臓移植後の認定について
- 認定の方法:術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定されます。
- 等級の継続:すでに障害年金を受給している方が肝臓移植を受けた場合、臓器が生着し安定的に機能するまでの間を考慮し、術後1年間は従前の等級(手術前の等級)が継続されます。
最後に
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