【社労士の視点】障害年金審査に「見えざる手」? 不支給倍増と内部文書が示すもの
社会保険労務士として、障害年金の請求支援に日々向き合う中で、2024年ごろから、診断書の内容等からみて明らかに不当と思われる不支給決定や低い等級での決定が目立つようになったと感じておりました。そうした中、立て続けに報じられる日本年金機構・障害年金センターの審査実態に関する報道に、現場の実感とも重なる強い憤りと危機感を覚えています。
まず、共同通信が報じたように(Yahoo!ニュース 2025年4月28日配信記事*1)、障害年金センターにおける2024年度の不支給決定件数が前年度比で倍増し3万人を超えたという衝撃的な事実が明らかになりました。記事では、その背景として昨年10月に就任したセンター長の「厳しい考え方」による審査厳格化の可能性が示唆されています。
さらに、その翌日には、同じく共同通信によって、機構側が審査に関与する医師に対し、不支給や低い等級につながるような「判断誘導」とも取れる内部文書を作成・使用していた可能性が報じられました(Yahoo!ニュース 2025年4月29日配信記事*2)。この記事によれば、機構職員側が、本来中立的な立場で医学的判断を行うべき認定医に対し、事前に「判定を決めておく」かのような準備をし、具体的な傷病(精神疾患など)について、支給抑制を念頭に置いたかのような「判断の方向性」を示す内部資料を作成していたというのです。
これら一連の報道は、単に特定の責任者の意向が反映されているというレベルを超え、組織として審査の「結論ありき」で運用しているのではないかという重大な疑念を抱かせるものです。障害年金の審査は、請求者から提出された診断書等の医学的資料に基づき、国民年金・厚生年金保険障害認定基準に則って、客観的かつ公正に行われなければなりません。機構の職員が医師の医学的判断に介入・誘導するような行為は、審査の根幹を揺るがす、断じて許されない行為です。
さらに、後の報道(*2)で触れられた内部資料では、職員の裁量や、どの認定医に書類が回るかによって支給の可否や金額が左右される可能性まで示唆されているとのこと。これでは、請求者にとっては「運次第」で結果が変わるということになり、制度に対する信頼は完全に失墜してしまいます。
私たち社労士は、請求者の方々が、病気やけがと闘いながら、必死の思いで請求書類を準備されている姿を間近で見ています。その切実な思いが、このような不透明で恣意的な運用によって踏みにじられている可能性があることに、強い憤りを感じずにはいられません。
日本年金機構には、一連の報道内容について、徹底的な内部調査を行い、全ての事実を国民の前に明らかにすることを強く求めます。そして、判定に関わる医師の独立性を確保し、客観的かつ公平・公正な審査基準の運用を徹底するための、実効性のある再発防止策と、抜本的な制度・運用の見直しが不可欠です。
では、このような状況下で、我々社会保険労務士に何ができるでしょうか。
まず、個々の請求者の方々への支援をより一層強化することです。今回の報道を受け、審査が厳格化している可能性を念頭に置き、これまで以上に診断書の内容を精査し、病歴・就労状況等申立書等において日常生活や就労への支障を具体的かつ客観的に示す工夫を凝らす必要があります。
次に、制度全体の改善に向けた働きかけです。個々の事例から見えてくる問題点や、審査における不合理な点を収集・分析し、日本年金機構や厚生労働省に対し、具体的な改善要求や政策提言を行っていくことが重要です。特に、審査基準の明確化、判断プロセスの透明化、そして判定に関わる医師の独立性確保は、喫緊の課題として強く訴え続ける必要があります。
私たち社労士は、障害年金制度が、真に支援を必要とする方々のためのセーフティネットとして適切に機能するよう、専門家としての知識と経験を活かし、請求者一人ひとりに寄り添うと同時に、制度自体の健全化に向けて、粘り強く声を上げ続けていく社会的責務があると考えています。
このような状況下で、障害年金の請求をお考えの皆様へ
一連の報道が示すように、現在の障害年金の審査は、これまで以上に慎重な対応が求められる、非常に厳しい状況にあると言えます。審査の厳格化や不透明な運用が懸念される中、ご自身やご家族だけで複雑な請求手続きを進めることには、大きな負担と不安が伴うのではないでしょうか。
私たち障害年金を専門とする社会保険労務士は、このような厳しい状況だからこそ、皆様の強力な味方となります。最新の審査動向を踏まえ、医学的な資料の精査から、ご自身の日常生活や就労状況を正確に伝えるための書類作成まで、専門的な知識と経験を駆使して、皆様をあらゆる角度からサポートいたします。煩雑な手続きや年金事務所とのやり取りにかかる時間と労力を軽減し、治療や療養に専念いただくためにも、専門家の活用は有効な手段です。
「自分は障害年金の対象になるのだろうか?」「手続きが複雑で、何から手をつけていいかわからない」「一度不支給になったが、諦めきれない」… このようなお悩みや不安をお持ちでしたら、どうか一人で抱え込まず、私たち専門家にご相談ください。初回のご相談は無料で行っております。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。
<出典>
*1: 【独自】障害年金、不支給が倍増3万人に 24年度、幹部交代で厳格化か (Yahoo!ニュース/共同通信 2025/4/28配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ebbadf68853fcdbdf85fa50f1332f35834fa1dbc
*2: 【独自】障害年金判定、判断誘導の可能性 機構、医師の傾向と対策文書作成 (Yahoo!ニュース/共同通信 2025/4/29配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/685586944b116f8a8cf8a542111c9199a72eb9e