呼吸不全の障害認定基準
ポイント
呼吸不全とは?
- 原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O₂分圧と動脈血CO₂分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態のことをいいます。
- 呼吸不全の、認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全です。
- 慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経以上等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患というわけではありません。
呼吸不全の主要症状
- 咳、痰、腹痛、労作時の息切れ等の自覚症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見があります
呼吸不全の検査
- 動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等があります。
- 動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとします。
診断書
認定要領
病状判定による各等級の目安は、下記です。
3級 |
常時(24 時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の 労働に常に支障がある程度のもの。 |
在宅酸素療法を施行中のものについては、障害の程度を認定する時期は、
在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く)とします。
3級 |
慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているもの |
慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、
多臓器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示す
ものとは言えないため、注意が必要です。
1級 |
動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 |
動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 |
動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
補足
- 臨床症状、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。
等級判定基準で使われる検査の内容
一般状態区分
区分 |
一般状態 |
ア |
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ |
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業(軽い家事や事務等)はできるもの |
ウ |
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、 軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ |
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ |
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
動脈血ガス分析値
区分 |
検査項目 |
単位 |
軽度異常 |
中等度異常 |
高度異常 |
1 |
動脈血 O2分圧 |
Torr |
70~61 |
60~56 |
55 以下 |
2 |
動脈血 CO2分圧 |
Torr |
46~50 |
51~59 |
60 以上 |
予測肺活量1秒率
検査項目 |
単位 |
軽度異常 |
中等度異常 |
高度異常 |
予測肺活量 1秒率 |
% |
40~31 |
30~21 |
20 以下 |
慢性気管支喘息の各等級に相当すると認められるものを一部例示すると以下の通りです。
1級 |
最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となり、無症状の期間がなく |
2級 |
呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、 |
3級 |
喘鳴や呼吸困難を週 1 回以上認める。非継続的なステロイド薬の使用を |
補足
- 上記症状は、的確な喘息治療を行っても、その症状を示す場合に限ります。
- 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理があるため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要があります。
- 「喘息+肺気腫(COPD)」、「喘息+肺線維症」については、この基準で認定します。
- 病状判定に際しては、動脈血 O2分圧値を重視されます。
ポイント
原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患の場合
- 動脈血ガス分析値、及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定されます。
肺疾患に罹患し手術を行い、その後呼吸不全を生じた場合
- 肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められます。
最後に
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参考サイト:国民・厚生年金 障害認定基準